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ステラルーメン(XLM)のネットワークであるStellarを使った海外送金は、Stellarを共通の決済レイヤーとして使う仕組みです。送金側の「アンカー」が現地通貨を受け取り、デジタルドル(多くはUSDC)などの資産が約5秒で台帳上を移動し、受取側の事業者が現金や銀行口座への入金で支払います。暗号資産(仮想通貨)としてのXLMをウォレット間で直接送ることもでき、その場合のネットワーク手数料は0.00001 XLMです。難しいのは、実は真ん中の送金ではありません。各国で、合法的かつ安くお金をネットワークに出し入れできるかどうかが本当の課題です。
本記事では、Stellarでの送金が実際にどう動くのか、どこが大規模に使っているのか、人の手が介在する部分まで含めるとコストはいくらになるのか、そしてアジアではどうなっているのかを順に見ていきます。アジアでは韓国と日本が毎年数十億ドル規模のお金を海外へ送り、フィリピン、インドネシア、ベトナムがそれを受け取っています。上の計算ツールは、世界銀行が公表する送金コストの世界平均と、Stellarの基本ネットワーク手数料を比べたものです。あくまでコストの下限であり、見積もりではない点に注意してください。
海外送金の手数料はなぜいまも高いのか
世界銀行は、送金コストをデータベース「Remittance Prices Worldwide」で追跡しています。2025年第1四半期のデータでは、200ドルを送る際の世界平均コストは6.49%で、前四半期の6.26%から上がりました。国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット10.cは、2030年までにこれを3%未満に下げることを掲げています。つまり業界の現状は、目標の2倍以上のコストがかかっているわけです。200ドルの送金なら、6.49%はおよそ13ドル。故郷の家族に届かずに消えていくお金です。
スピードについては、暗号資産業界の宣伝とは少し事情が異なります。Swift自身のデータによれば、Swiftネットワーク上の国際送金の約90%は1時間以内に受取銀行へ届いています。ところが2024年10月時点で、1時間以内に最終受取人の口座まで届いたのは43%にとどまりました(Swiftのスピードに関するレポート)。時間がかかるのは多くの場合「ラストワンマイル」、つまりコンプライアンス確認、現地の決済処理、受取銀行の内部処理です。Stellarが短縮できるのは送金の「真ん中」であり、両端は部分的にしか改善できない。この点は頭に入れておく価値があります。
では、お金はどこで目減りしているのでしょうか。コルレス銀行(中継銀行)の連鎖、為替マージン、現金を扱うコスト、そして各事業者が負うコンプライアンス業務です。Stellarは最初の2つに正面から切り込みます。コルレス銀行の連鎖を数秒で決済が完了する公開台帳に置き換え、内蔵の取引所機能で通貨ペアの市場レートを誰でも確認できるようにしています。一方、現金の取り扱いやコンプライアンスのコストは消えるわけではなく、アンカー側に移ります。
Stellarの海外送金が動くしくみ
典型的なStellar送金は、3つの区間で成り立っています。まず、送金側の事業者(アンカー、現金入金パートナーを持つウォレット、取引所など)が送り手の現地通貨を受け取り、Stellarトークンをアカウントに付与します。次に、そのトークンがネットワーク上を受取側の事業者まで移動します。最後に、受取側の事業者がトークンを現地通貨に換えて支払います。1つ目と3つ目の区間については、Stellarのアンカーと法定通貨の入出金で詳しく解説しています。
Stellarの設計が効いてくるのは、真ん中の区間です。台帳(レジャー)はおよそ5秒ごとに確定し、Stellarのコンセンサスプロトコルはフォーク(分岐)しないため、レジャーが閉じた時点で支払いはファイナル(最終確定)になります。追加の承認を何度も待つ必要はありません。商品を出荷したり顧客の残高に反映したりする事業者にとっては、スピードそのものより、この「確実に終わった」という安心感のほうが価値を持つことも多いのです。
パスペイメントとブリッジ通貨としてのXLM
Stellarには、他の多くのブロックチェーンならスマートコントラクトが必要になる機能が標準で備わっています。それがパスペイメントです。送り手はある資産で支払い、受取人は別の資産で受け取れます。ネットワークが内蔵のオーダーブックと流動性プールから経路を探し、1つのトランザクションの中で両替まで済ませます。「strict send」モードでは送る金額を固定し、受取人が受け取る最低額を指定します。「strict receive」モードでは届く金額を固定し、支払う上限を決めます。レートが指定の範囲を超えて動いた場合、支払いは中途半端に実行されることなく、まるごと失敗します。
ここでXLMがブリッジ通貨として働く場面があります。2つのトークンの間に直接の市場がなければ、たとえば「トークンA→XLM→トークンB」のようにXLMを経由できるのです。Stellarの公式ドキュメントでは、USD→XLM→BTC→EURという連鎖が例に挙げられています。とはいえ、現在の商用の決済フローの大半はXLMそのものではなく、ステーブルコインで動いています。「MoneyGramはXLMをブリッジ通貨として使っている」というのはよくある誤解で、実際には同社のStellarサービスはUSDCと、2026年6月からは自社のMGUSDを使っています。XLMが必要なのは、手数料と、すべてのアカウントが保持すべき少額の最低残高のためです。
実際の主役はステーブルコイン
送金で何より大事なのは、価格が安定していることです。釜山で働く出稼ぎの女性は、家族の家賃にあてるお金を、たとえ1時間でも暗号資産の値動きにさらしたくはないでしょう。だからこそ、実際の決済額の大半を運んでいるのはStellar上のステーブルコイン、とりわけ2021年2月から稼働しているCircleのUSDCです。USDCなら送金側も受取側もドル建てで金額を決められ、受取側のアンカーが行う両替は「ドル→現地通貨」の1回だけで済みます。
Stellar送金はどれくらい速く、安いのか
ネットワーク上だけで見れば、とても速く、とても安いと言えます。最低手数料は1オペレーションあたり100ストループ、つまり0.00001 XLMで、最新の確認時点では、実際に最も多く支払われていた手数料もこの100ストループの最低額でした。手数料はバリデーターに支払われるのではなく、ロックされた手数料プールに入ります。すべてのアカウントには1 XLMの最低残高が必要で、さらにUSDC用などのトラストラインを1つ開くごとに0.5 XLMが加わります。混雑時の手数料、リザーブ、メモについてはXLMの送金手数料とスピードで詳しく解説しているので、ここでは繰り返しません。
フェアに比べるなら「端から端まで」で見るべきです。上の計算ツールは世界銀行の平均とStellarの基本手数料を並べているので、その差は圧倒的に見えます。しかし実際の利用者は、アンカーの入金・出金手数料、両替のたびにかかる為替スプレッド、場合によっては取引所の取引手数料も支払います。これらは事業者や送金ルートによって異なり、Stellarルートのコストを第三者が測定した公開データセットは見つかりませんでした。Stellarが取り除くのは中間に積み重なる仲介マージンであり、残りのコストは両端に誰がいるかで決まります。
この低コストのおかげで、少額決済(マイクロペイメント)も現実的になります。ネットワーク手数料が1セントのごく一部なら、2ドルの投げ銭、記事ごとの課金、少額の日払い賃金の送金も手数料に食われません。注意したいのは1 XLMのアカウント最低残高で、ごく少額の残高ではこれが無視できません。また、少額を現金化する場合でも、出口(オフランプ)でかかる手数料はそのまま発生します。
Stellarを使った送金の実例
MoneyGram。MoneyGramとStellar開発財団(SDF)は、2021年10月に提携を発表しました。2022年6月にはMoneyGramがStellar上で「暗号資産⇔現金」サービスを開始し、対応ウォレットの利用者がMoneyGramの店舗で現金をUSDCに換えたり、その逆を行えるようになりました。最初の対象市場には米国、カナダ、ケニア、フィリピンが含まれていました(SDFの発表)。3年間の振り返りでSDFは、同サービスが「170カ国以上」で提供され、累計取扱高は「3,000万ドル近く」に達したと述べています(SDF)。いずれも企業側が公表した数字です。規模感にも注意が必要で、3年間で数千万ドルというのは確かな実績ですが、世界の送金フロー全体から見れば小さなものです。MoneyGramはその後さらに踏み込み、コロンビアでUSDC残高を持てるアプリ(2025年9月)や、Stellar上の自社ステーブルコインMGUSD(2026年6月)を投入しています。
UNHCRとStellar Aid Assist。2022年12月、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はウクライナの避難民へのUSDC送付を始めました。受取人はStellarウォレットでUSDCを保有し、MoneyGramを通じて現金化できます。1年後、SDFはこのプログラムが「1,500人以上」に届き、「110万ドル超」を配布したと報告しました(SDF)。「数百万人を支援した」という主張を見かけることがありますが、これは誤りです。初期の計画にあった「最大5,000ウォレット」も目標であり、実績ではありません。
WirexとVisa。SDFのプレスリリースによると、Wirexは2025年11月、Stellar上のUSDCとEURCによるVisaカードの決済処理を開始しました。送金サービスではありませんが、国境を越えた資金の流れが絶えないカードネットワークに、Stellar上のステーブルコイン決済が入り込みつつあることを示す例です。
アジアでのこれまで。バンコク拠点のLightnetは「Stellar上に構築された」企業を名乗り、2020年1月にUOB主導のシリーズAで3,120万ドルを調達しました(Finextra)。現在もStellarを使っているかどうかは確認できませんでした。フィリピンでは、Coins.phがStellar Community Fundから「Stellar Remittances」プロジェクトの助成を受け、2024年にはStellar上で展開されたMastercardのCrypto Credentialのローンチパートナーにもなっています。どちらについても、公開された取扱高の数字は見つかりませんでした。
アジアの送金ルート:日本・韓国が送り、東南アジアが受け取る
アジアには、送る側・受け取る側の両面で世界有数の送金ルートがあります。世界銀行の個人送金データを見ると、その規模がよくわかります。
| 国 | 立場 | 2025年の送金額 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 送金国 | 143.1億ドル(流出) | 世界銀行 |
| 日本 | 送金国 | 71.7億ドル(流出) | 世界銀行 |
| フィリピン | 受取国 | 415.6億ドル(流入) | 世界銀行 |
| インドネシア | 受取国 | 176.0億ドル(流入) | 世界銀行 |
| ベトナム | 受取国 | 160億ドル超(流入) | ベトナム政府 |
世界銀行のデータはベトナムの系列が空欄のため、ベトナムの数字はHanoi Timesが伝えた政府関係者の発表に基づいています。韓国・安山(アンサン)の工場で働くベトナム人がハノイへ給料を送る場面や、大阪で働くインドネシア人介護士が中部ジャワの家族を支える場面を思い浮かべてみてください。ブロックチェーン決済が「もっと安くする」と約束しているのは、まさにこうしたお金の流れです。
ただし、現実も直視しておきましょう。最新の確認時点で、日本、韓国、ベトナム、インドネシアのいずれにも、トークンを現地通貨に換える稼働中のStellarアンカーは見つかりませんでした。SDFのビジネスチームは2026年初め、インドネシア、フィリピン、ベトナムでアンカーネットワークを計画していると述べましたが、これは計画であってサービスではありません。アジアの受取国でいま最も進んでいるのはフィリピンで、MoneyGramのStellarサービスが2022年に同国で始まっています。各国のルールも重要です。ベトナムの中央銀行は暗号資産を依然として違法な決済手段と位置づけており、試験的に始まった暗号資産市場ではドン建ての決済が求められます。詳しくはベトナムのページで解説しています。韓国では、ウォン建てステーブルコインを規律する法案が最新の確認時点でまだ成立していませんでした。日本ではXLMが金融庁に登録された多くの暗号資産交換業者で取り扱われていますが、それはあくまで売買の話で、送金インフラとは別物です。
Stellar Disbursement Platformによる事業者の一括支払い
企業やNGOにとって、より実用的なツールはStellar Disbursement Platform(SDP)かもしれません。オープンソースの一括支払いシステムで、組織が受取人と金額のリストをアップロードすると、各受取人のStellarウォレットへ支払いが送られます。SDFは2022年12月にウクライナでの人道支援で初めてSDPを使い、2023年8月にオープンソース化しました。最初の技術ホストはZodia Custodyです。SDFによれば、SDPを使った支払いはガンビアからメキシコまで、さまざまな地域の人々に届いています。
アジアの中小企業にとっての使い道は想像しやすいでしょう。フィリピンのフリーランサーへの報酬、現地スタッフへの手当、海外の仕入れ先へのUSDCでの支払いなどです。ただし、SDPはオフランプ(出口)の問題までは解決しません。受取人にはウォレットと、USDCを実際に使えるお金に換える現地の手段が必要で、結局はアンカーや取引所の話に戻ってきます。SDP全体の取扱高や利用者数のデータは見つからなかったため、他所で大きな数字を見かけても慎重に受け止めてください。
ステラルーメンで送金する方法
送る側も受け取る側もすでに暗号資産を使っているなら、直接の送金はシンプルです。以下はウォレット間で送金する場合の手順です。アンカーを経由する事業者向けのフローでは本人確認と見積もりが加わりますが、基本的な考え方は同じです。
- Stellarウォレットを用意する自分で鍵を管理するセルフカストディ型のウォレットか、Stellarに対応した取引所の口座を選びます。主な選択肢はStellarウォレットガイドで比較しています。アカウントを有効化するために最低1 XLMを入れ、手数料分も少し上乗せしておきましょう。
- XLMかUSDCを用意する正規に登録・認可を受けたプラットフォームでXLMを購入し(ステラルーメンの買い方を参照)、価値を安定させたい場合はUSDCに交換します。USDCを保有するにはトラストラインが必要で、さらに0.5 XLMがリザーブとして確保されます。
- 受取人の情報を確認する受取人の「G…」で始まるアドレスを正確にコピーします。受取先が取引所なら、取引所が指定するメモも必ず入力してください。メモの入れ忘れや誤りは、入金の遅延や紛失につながります。
- 送金して着金を確認する送金を実行します。数秒で決済されるはずなので、公開エクスプローラーで取引を検索し、届いたことを受取人に示せます。
Stellarで送金する前に確認したい注意点
Stellarは強力な決済ネットワークですが、送金の仕組みは一番弱い部分で決まります。家族への定期的な仕送りや事業の支払いに使う前に、私たちなら次の点を確認します。
- 出口(オフランプ)の有無:アジアの多くの国にはまだStellarアンカーがなく、現金化するには取引所で売却して銀行に出金する必要があります。そのたびに手数料がかかります。
- KYCとAML:アンカーや取引所には本人確認の義務があります。身分証の提出に加え、住所確認書類や資金の出どころの説明を求められることもあります。
- 各国のルール:暗号資産やステーブルコインのルールは、韓国、日本、ベトナム、インドネシアで大きく異なります。まず規制と安全対策のガイドと該当する国のページを読んでください。
- 為替スプレッド:ネットワーク手数料はごくわずかでも、両替のたびに事業者が設定するスプレッドがかかります。必ず最終的な受取額で比べましょう。
だからといって、Stellarの有用性が下がるわけではありません。アジアの送金で勝ち残るのは、現地の銀行口座や現金ネットワークを台帳につなぐ、ライセンスを持った事業者だということです。それが実現するまでは、ネットワークのスピードとコストの優位は本物であっても、話の一部にすぎません。
よくある質問
Stellarの海外送金はどのような仕組みですか?
まずアンカーと呼ばれる事業者が現地通貨を受け取り、USDCなどのトークンをStellarアカウントに付与します。トークンは約5秒ごとに確定する台帳上をアカウント間で移動し、受取側では別のアンカーや現金取扱業者が現地通貨で支払います。途中で資産を交換したい場合も、パスペイメントを使えば1回のトランザクションで済みます。
ステラルーメンで送金すると銀行より安くなりますか?
ネットワーク手数料は基本料金で1オペレーションあたり0.00001 XLMと、ごくわずかです。ただし実際のコストには、現金をトークンに換え、また現金に戻すサービスの手数料と為替スプレッドも含まれます。ネットワーク手数料だけでなく、受取人に最終的にいくら届くかで比べてください。オンチェーン側の詳細は送金手数料とスピードのガイドで解説しています。
MoneyGramはXLMを使って送金しているのですか?
いいえ。MoneyGramのStellar上のサービスで使われているのはステーブルコインのUSDCと、2026年6月からは自社のMGUSDです。XLMが必要なのはネットワーク手数料とアカウントのリザーブ(最低残高)だけです。暗号資産メディアでもよく見かける誤解です。
日本や韓国からベトナムやインドネシアへStellarで送金できますか?
ネットワーク自体は価値を運べますが、最新の確認時点で、日本・韓国・ベトナム・インドネシアにはトークンを現地通貨に換える稼働中のStellarアンカーは見つかりませんでした。実際には最後の区間を取引所経由で行うことが多く、その分の手数料や各国のルールがかかります。国ごとのルールはアジアハブで確認できます。
Stellar Disbursement Platformとは何ですか?
Stellar開発財団(SDF)が提供するオープンソースのツールで、多数の受取人のStellarウォレットへ一括で支払いを送れます。2022年12月にウクライナでの人道支援で初めて使われ、2023年8月にオープンソース化されました。給与、支援金、業務委託先への支払いなどに利用できます。




