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Stellarのステーブルコインとは、主に米ドルなどの法定通貨に価値が連動し、Stellarネットワーク上でネイティブに発行されているトークンのことです。圧倒的に大きいのは、Circleが2021年2月から発行しているStellar版のUSDCで、最新の確認時点の流通量は約3億枚でした。これにPayPalのPYUSD、Circleのユーロ建てEURC、MoneyGram独自のMGUSDが加わり、より小規模な発行体が豪ドルやユーロ、ごく少量ながら円もカバーしています。ステラルーメン(XLM)を手数料に使うこのネットワークは、暗号資産(仮想通貨)の中でも「ドルを運ぶ」用途に強いチェーンです。
Stellarはもともと決済のために作られたので、ステーブルコインはまさにうってつけの積み荷です。手数料は1オペレーションあたり0.00001 XLM、決済は約5秒で完了し、トークンを現金に換えられるアンカーのネットワークもあります。本記事では、押さえておきたいステーブルコインを一覧にし、チェーン上に実際どれだけの価値があるのか(2つの集計サイトで答えが違います)を説明したうえで、偽トークンにだまされずにStellarでUSDCを保有・送金する方法を紹介します。上のライブパネルは、StellarのHorizon APIからUSDCとPYUSDの供給量を直接読み込んでいます。
Stellarのステーブルコイン一覧
最新の確認時点で、一定の供給量があるか、アジアとの関わりがある法定通貨担保型のステーブルコインを以下にまとめました。供給量はStellarExpertとDefiLlamaのデータで、日々変動するため、ある時点のスナップショットとしてご覧ください。
| ステーブルコイン | 発行体 | Stellar対応時期 | 確認時点の供給量 |
|---|---|---|---|
| USDC | Circle | 2021年2月 | 約3億700万 |
| MGUSD | Bridge(MoneyGram向け) | 2026年6月 | 約2,530万 |
| PYUSD | Paxos(PayPal向け) | 2025年9月 | 約1,800万 |
| EURCV | SG-FORGE | 2025年2月 | 約1,680万ユーロ |
| EURC | Circle | 2023年9月 | 約460万 |
| AUDD | Novatti / AUDC | 2022年11月 | 約290万 |
| GYEN | GMO-Z.com Trust | 2022年に発表 | 約3,350万円 |
Stellar上には、利回りのつくドル建て商品も2つあります。OndoのUSDY(2025年9月から)とFigureのYLDS(2026年5月から)です。保有者にリターンを支払うため、決済用のステーブルコインというよりトークン化ファンドに近い存在で、現実資産(RWA)のトークン化のガイドで取り上げています。
Stellar版USDC:ネットワークの主力
Stellar上のUSDCは2021年2月2日に稼働しました(SDF)。Circleが発行アカウントGA5ZSEJYB37JRC5AVCIA5MOP4RHTM335X2KGX3IHOJAPP5RE34K4KZVNから発行しており、この発行アカウントこそが、そのトークンを「本物の」USDCたらしめる唯一の根拠です。最新の確認時点で、StellarExpertによる流通量は約3億700万USDC、トラストラインは250万超で、そのうち残高があるものは約72万7,000でした。
実際の決済サービスの多くが使っているのが、Stellar上のUSDCです。MoneyGramの入出金サービスもUSDCで動いており、UNHCRはウクライナ避難民への支援に使い、WirexはVisaカードの利用代金をStellar上のUSDCとEURCで決済しています。決済アプリを作る側にとっても使う側にとっても、Stellarでの海外送金とは、実質的にはUSDCによる送金であり、XLMは手数料をまかなう役割です。
PYUSD・EURC・MGUSD:新たに加わったステーブルコイン
Stellar上のPYUSD
Paxosが発行するPayPalのドル建てステーブルコインは、2025年9月18日にStellarで稼働しました(SDF)。Stellar Asset Contractを使っているため、従来型のStellar決済でも、Sorobanのスマートコントラクトでも利用できます。供給量はまだ控えめで、最新の確認時点では約1,800万と、USDCの約3億に比べれば小さく、Stellar上のPYUSDは「主力」というより「立ち上がったばかり」と見るのが妥当です。
Stellar上のEURC
Circleは2023年9月26日、マドリードで開かれたSDFのカンファレンス「Meridian」で、ユーロ建てステーブルコインEURCのStellar対応を開始しました(Circle)。Stellar上の供給量は小さく、確認時点で500万未満でした。DefiLlamaの集計では、2025年2月にStellar対応が発表されたSociété Générale-FORGEのEURCVのほうが、現在はネットワーク上で大きなユーロ建てトークンになっています。
MGUSD(MoneyGram)
MoneyGramは2026年6月2日、StellarでMGUSDを開始しました。ローンチ時の発表によると、発行はStripe傘下のBridge、ミントはM0を通じて行われ、カストディはFireblocksが担当し、最初の市場は米国です。世界的な送金会社が、第三者のコインだけに頼るのではなく、Stellar上で自社のドル建てトークンを運営している点で注目に値します。
Stellar上のステーブルコインの総額は?
公式の数字はひとつではなく、主な2つの集計サイトでも結果が異なります。最新の確認時点で、DefiLlamaはStellar上のドル連動型ステーブルコインを約3億3,780万ドルと集計し、ほかにユーロ連動型が約2,260万ドル、豪ドルが約200万ドル、円が約21万ドルでした。rwa.xyzはステーブルコインの時価総額を3億7,153万ドルとし、保有者は約75万、直近30日の送金額は173億9,000万ドルと表示していました。
差が生まれるのは、各サイトがどのトークンを数えるかが違うからです。確認時点でDefiLlamaのStellarの一覧にはPYUSDとMGUSDが含まれておらず、この2つだけで4,000万ドルを超えます。また、何をステーブルコインとみなすかの方法も両サイトで異なります。公平にまとめるなら「Stellar上のステーブルコインはおよそ3億4,000万〜3億7,000万ドル」とし、必ず日付を添えるのがよいでしょう。
上のライブパネルは、Horizonから直接取得した第3の視点です。トークンがネットワーク上で置かれうる場所をすべて合計しています。つまり、Stellarアカウントに直接保有されている残高、スマートコントラクト(SorobanのDeFiプロトコルなど)にロックされたトークン、従来型の流動性プール、そしてクレーム可能残高(claimable balance)です。私たちが確認したときは、約2億100万USDCがアカウントに、約9,700万がスマートコントラクトに、約260万が流動性プールにあり、合計するとStellarExpertの約3億と一致しました。エクスプローラーやウォレットでこれよりずっと低い数字が表示されている場合は、アカウント残高の部分だけを数えている可能性が高いでしょう。
発行体がStellarを選ぶ理由
ステーブルコインの発行体にとって、Stellarには3つの利点がそろっています。1つ目はコストとスピードです。支払い1回の費用は1セントのごく一部で、約5秒で確定するため、少額で大量の取引に向いています。2つ目は、発行体向けの管理機能が組み込まれていることです。Stellarでは、スマートコントラクトを書かなくても、発行体がアカウントの承認を取り消し(凍結)たり、機能を有効にしていればトークンを回収(クローバック)したりできます。規制当局は多くの場合、こうした権限を求めます。確認時点のHorizonでは、USDCとPYUSDの両方で承認の取り消しが可能な設定になっており、PYUSDはクローバックも有効でした。
3つ目は流通網です。Stellarのアンカー規格とMoneyGramのネットワークは発行体に現金化への道筋を与えますし、Visaも2025年にStellarを自社のステーブルコイン決済ネットワークに加えました(The Block)。こうした入出金の仕組みはStellarのアンカーと法定通貨の入出金で解説しています。DeFiの分野では、USDCはBlendのようなレンディングプールでも使われています。詳しくはStellarのDeFiをご覧ください。
一方で、トレードオフもはっきり書いておきます。ステーブルコインの価値は、発行体の準備資産と法的な償還の約束の確かさ次第です。そして、規制当局を安心させるのと同じ管理機能によって、発行体は残高を凍結することもできます。
ステーブルコインとXLM、送るならどっち?
価値を動かすという点で、2つは役割が違います。XLMはネットワークのネイティブ資産で、すべてのアカウントに最低1 XLMが必要であり、すべてのトランザクションの手数料はXLMで支払われます。価格は暗号資産市場とともに動き、XLMのリアルタイム価格で確認できますが、給料日から次の給料日まで何日も保有すれば、多くの家庭や中小企業が望まないリスクを抱えることになります。ステーブルコインなら、移動中も金額が変わりません。
必ずしもどちらかを選ぶ必要はありません。Stellarに組み込まれたパスペイメントを使えば、送り手はある資産で支払い、受取人は別の資産で受け取れます。ネットワークのオーダーブックと流動性プールを使い、すべてが1回のトランザクションで完結します。XLMを持っている人が、相手側にはUSDCで届くように送ることもでき、事前に最低受取額を決めておけば、レートが悪いときは少なく届くのではなく支払い自体が失敗します。どちらの方法でもネットワーク手数料は同じくごくわずかです。詳しくはXLMの送金手数料とスピードをご覧ください。
StellarでUSDCを保有・送金する方法
StellarでUSDCを保有するには、XLMと比べてひと手間、トラストラインの追加が必要です。セルフカストディ型ウォレットでの流れは次のとおりです。
- アカウントを有効化するStellarウォレットガイドで紹介しているウォレットでStellarアカウントを作成し、最低残高の1 XLMに手数料分を少し足して入金します。
- USDCのトラストラインを追加する「資産を追加」を選び、CircleのUSDCを選択します。発行アカウントが「GA5Z」で始まり「KZVN」で終わることを確認してください。リザーブとして0.5 XLMが確保されます。
- USDCを手に入れるStellarネットワークでの出金に対応した取引所からUSDCを受け取るか、ウォレット内でXLMをUSDCに交換します。取引所が別のチェーンではなくStellarで送ろうとしているか、必ず確認しましょう。
- 送金する受取人のアドレスと、受取先が取引所の場合はメモを貼り付けます。受取人の側にもUSDCのトラストラインが必要で、ないと支払いは失敗します。
MetaMaskは2026年10月にStellarを標準ネットワークに加えました。同社のサポートページは、対応するトラストラインのないアカウントにブリッジした資金は失われる可能性があると警告しています。この注意はどこでも当てはまります。誰かからStellarのトークンを送ってもらう前に、トラストラインを確認しておきましょう。
Stellarでステーブルコインを持つリスク
ステーブルコインは現金のように感じられますが、固有のリスクがあります。最大のリスクは発行体です。トークンが1ドルの価値を持つのは、その裏にいる会社が準備資産を保有し、償還に応じる場合だけです。誰がコインを発行し、準備資産の報告書をどこで公開しているかを確認しましょう。2つ目は管理機能です。トークンを凍結・回収できる発行体は、法律上必要だと判断すれば、あなたのアカウントに対してもそれを実行できます。
次に、利用者側のミスがあります。Stellar版のUSDCを、別のネットワークを想定している取引所に送ったり、メモを付け忘れたりすると、資金の着金が遅れたり失われたりすることがあります。ステーブルコインをDeFiに預ければ、スマートコントラクトや設定に起因するリスクも加わります。2026年2月には、コミュニティが運営するBlendのプールのひとつから、価格オラクルが参照していた流動性の薄い市場を攻撃者が操作し、XLMとUSDCで約1,020万ドルが流出しました。これはUSDCやStellar自体の欠陥ではなくプールの設定の問題でしたが、そのプールの預け入れ者は損失のリスクにさらされました。最後に、アジア各国ではステーブルコインのルールがまだ整備の途中で、何が認められるかは今後変わる可能性があります。
偽トークンに注意:ティッカーではなく発行体を確認する
Stellarでは、誰でも任意のコードでトークンを発行できます。最新の確認時点で、エクスプローラーを検索すると、AUDDやGYENなど本物の資産と同じコードを使った非公式のトークンが、本物の企業とは無関係の発行体から出ていました。「USDC」という名前のトークンでも、Circleの発行アカウントから出ていなければCircleのUSDCではありません。
身を守るための習慣は2つです。1つ目は、発行アカウントを公式の発行体が公開しているものと照らし合わせるか、StellarExpertで確認すること。2つ目は、ホームドメインを確認することです。MGUSDのホームドメインはmgusd.moneygram.com、AUDDはaudd.digitalです。割引価格でステーブルコインを売ると持ちかけられたり、自分で追加した覚えのない「USDC」がウォレットに表示されたりしたら、偽物だと考えてください。その他のよくある詐欺については、規制と安全対策のガイドで解説しています。
アジアから見たステーブルコイン:円、豪ドル、そして空白
アジアのユーザーにとって、現状は正直なところ手薄です。オーストラリアのAUDDは2022年11月にStellarで稼働し(SDF)、約290万AUDDとネットワーク上のアジア太平洋地域の法定通貨ステーブルコインの中心です。日本のGMO-Z.com Trust Companyは2022年にGYENとZUSDのStellar対応を発表しましたが、GYENの供給量はごくわずか(約3,350万円)で、現在の状況や、日本で新たに整備されたステーブルコインのルールとの関係は確認できませんでした。JPYCなど、新たに規制の枠組みのもとで登場した円建てステーブルコインについても、Stellar上での発行は確認されていません。
ウォン、ルピア、ベトナム・ドンのステーブルコインは、Stellar上に見つかりませんでした。韓国では、ウォン建てステーブルコインを規律する法案が最新の確認時点で成立しておらず、民間のウォン建てトークンの実証実験は他のチェーンで行われています。日本では、XLMそのものは金融庁に登録された多くの暗号資産交換業者で取り扱われていますが、Stellar上の円建てステーブルコインはまだ選択肢に入っていません。当面、Stellarを使うアジアの事業者は、主にUSDC建てで価格を決め、入口と出口で現地通貨に換えているのが実情です。
よくある質問
Stellar上のUSDCはEthereum上のUSDCと同じものですか?
発行元は同じCircleで、償還の仕組みも同じですが、Stellarネットワーク上の独立したネイティブ資産です。ブリッジや取引所を介さずに、Stellar版のUSDCをEthereumのアドレスへ送ったり、その逆をしたりすることはできません。取引所から出金する前に、どのネットワークを指定すべきか必ず確認してください。
StellarでUSDCを持つのに、なぜトラストラインが必要なのですか?
Stellarのアカウントは、明示的に「信頼する」と設定した資産しか保有できません。これにより、望まないトークンを受け取ってしまうことを防いでいます。USDCのトラストラインの追加はトランザクション1回で済み、リザーブとして0.5 XLMが確保されます。残高ゼロの状態でトラストラインを削除すれば、この0.5 XLMは戻ってきます。
Stellarにはどれくらいのステーブルコインがありますか?
最新の確認時点で、DefiLlamaはStellar上のドル連動型ステーブルコインを約3億3,800万ドルと集計し、ほかに少額のユーロ、豪ドル、円建てがありました。一方、rwa.xyzの集計は合計約3億7,200万ドルでした。差は、各サイトがどのトークンを含めるかによるものです。最大はUSDCで、約3億枚と群を抜いています。
Stellarに円やウォン、ルピアのステーブルコインはありますか?
あるのは、GMO-Z.com Trust Companyが2022年にStellar対応を発表した円建てステーブルコインGYENのごく少量だけで、現在の状況は確認できませんでした。ウォン、ルピア、ドンのステーブルコインはStellar上に見つかりませんでした。Stellar上のアジア太平洋地域の法定通貨ステーブルコインとしては、オーストラリアのAUDDが中心です。
Stellarのステーブルコインが本物かどうか、どう見分ければいいですか?
コード(ティッカー)だけでなく、発行アカウントとホームドメインを確認してください。Stellarでは誰でもUSDCやAUDDという名前のトークンを作れます。公式の発行体が公開している発行アカウントと照らし合わせるか、エクスプローラーで調べましょう。手順はXLMエクスプローラーのガイドで紹介しています。



