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Stellarのトークン化とは、投資信託の受益権や米国債を裏付けとするノート、クレジット、コモディティといった実物資産(RWA:Real World Assets)に対する権利を、Stellarネットワーク上のトークンとして発行する取り組みです。ステラルーメン(XLM)のおまけ的な話ではありません。当サイトの直近の確認時点で、rwa.xyzはStellar上で84商品・約39.2億ドル分の実物資産をカウントしており、その中心はSpiko、Franklin Templeton、Ondoが発行するトークン化MMFです(rwa.xyzのStellarダッシュボード)。
なぜStellarなのか。理由は地味ですが、規制下の発行体にとっては決定的です。手数料は1セントのごく一部、台帳は約5秒で確定し、さらに裁判所や規制当局から求められたときに発行体が保有者を承認・残高を凍結・トークンを回収できる機能が最初から組み込まれています。本記事では、Stellar上のRWAの仕組み、主な発行体、アジア太平洋の状況、そしてなぜその多くがアジアの一般の個人投資家にはまだ手の届かない商品なのかを解説します。
Stellarでのトークン化とは、実際には何が起きているのか
専門用語をはがしてしまえば、トークン化ファンドは「おなじみの商品を新しい台帳に載せたもの」にすぎません。規制下の運用会社がファンドを運営し、短期国債を買い、基準価額(NAV)を算出し、当局に報告するという構図は変わりません。変わるのは受益者名簿です。名義書換代理人の社内データベースの代わりに、所有権がStellarの資産として記録されます。BENJIのようなコードを持ち、運用会社が管理する発行アカウントから発行されるトークンです。
この変化が実務上のメリットを生みます。承認済みの保有者どうしなら、銀行営業日に縛られず24時間いつでも受益権を移転できます。決済はT+1やT+2ではなく1台帳分、つまり約5秒です。分配金をオンチェーンで支払うこともできます。しかもトークンは標準的なStellarアセットなので、USDCやXLMと同じStellar対応ウォレットで保管したり、Sorobanスマートコントラクトで担保として使ったりできます。
ここで、統計サイトがしばしば一緒くたにする2つのカテゴリーを分けておきましょう。USDCやPYUSDのようなステーブルコインは「トークン化された現金」で、こちらはステーブルコインのページで扱っています。狭い意味でのRWAは投資商品、つまりMMF、国債、プライベート・クレジット、金などです。本記事が扱うのは後者です。
機関投資家が実物資産の発行にStellarを選ぶ理由
運用会社は「なんとなく」でブロックチェーンを選びません。本人確認(KYC)、制裁リストのスクリーニング、裁判所命令への対応といったルールを守り、それを当局に証明する必要があります。Stellarは何年も前からプロトコルレベルで発行体向けのコントロール機能を備えているため、バグが潜むおそれのある独自のスマートコントラクトに頼らずにこうしたルールを実装できます。
SDFの開発者向けドキュメントは、発行体が設定できる4つのアカウントフラグを説明しています。
- Authorization required(承認必須): 発行体がトラストラインを承認するまで誰も資産を保有できません。ファンドのKYCホワイトリストとそのまま対応します。
- Authorization revocable(承認取り消し可能): 発行体は保有者の残高を凍結したり、ポジションの解消しかできない制限状態に落としたりできます。
- Clawback enabled(回収可能): 誤りの訂正や法的命令への対応などのために、発行体がトークンを回収(バーン)できます。revocableフラグとの併用が前提です。
- Authorization immutable(変更不可): 逆方向の約束です。一度設定すると、発行体は上記の権限を二度と有効にできません。
Stellar Asset Contractは、これらのコントロールをスマートコントラクトの世界にも持ち込みます。従来型(クラシック)の資産にはそれぞれ専用のコントラクトが1つ予約されており、SDFは資産とそのコントラクトが「同じ資産を表す」と強調しています。ラップされたコピーではありません。コントラクトへの送金でも承認ルールとクローバックのルールは守られます。発行体から見れば、ファンドトークンをレンディングプールで使ってもコンプライアンスの枠から外れない、ということです。
コストとスピードも重要です。Stellarの1オペレーションの基本手数料は0.00001 XLMで、手数料はバリデーターではなくロックされたプールに入ります。詳しくは送金手数料と速度のガイドをご覧ください。また、ネットワーククローラーObsrvr Radarがトップティアとして示すバリデーター組織には、SDFやMoneyGramなどと並んでFranklin Templeton自身も含まれています。つまり発行体が、自社ファンドの土台となるインフラの運営にも加わっているのです。
Franklin TempletonのBENJI:すべての始まりとなったファンド
Franklin OnChain U.S. Government Money Fund(FOBXX)は2021年にStellarでローンチしました。Franklin TempletonとSDFは、パブリックブロックチェーンを公式の記録システムとして使う初の米国登録投資信託だと説明しています。発行体側の主張ではあるものの、広く引用されている表現です。BENJIトークン1枚はファンドの1口に相当します(SDFのプレスリリース)。
もっとも具体的な数字は、5周年のリリースにあります。BENJIシリーズの運用額は2026年4月29日時点で全チェーン合計19.8億ドル。Stellar上のFOBXX単体でも2026年4月に6億5,000万ドルを超え、rwa.xyzの集計でStellar上2番目に大きいトークン化RWAとなりました。BENJIの投資家数は2024年4月から2026年3月までに140%以上増加しています。2025年5月に個人保有者へもP2P送金を開放したあと、P2P送金の累計額は2026年3月31日までに2億1,100万ドルを突破しました。当サイトの直近の確認時点で、rwa.xyzはStellar上のFranklin商品を約6億8,100万ドルと評価しています。
その後Franklinは他のブロックチェーンにも広げたため、「BENJI」は今ではマルチチェーンのブランドです。それでも最初のネットワークはStellarであり、Franklinは2024年に完全トークン化したルクセンブルク籍UCITSファンド、2025年にはシンガポールで初の個人向けトークン化ファンドにもStellarを選んでいます。
Spiko、Ondo、WisdomTreeなど主要なRWA発行体
先駆者はFranklinですが、最大手ではありません。rwa.xyzによると、トップはパリ拠点のSpikoで、Stellar上の9商品で約20億ドルと大きく引き離しています。SpikoはUSTBL(米国短期国債)やEUTBL(ユーロ圏政府短期証券)といったトークン化MMFを発行しており、最大のチェーンはStellarです。2026年3月には欧州最大の運用会社Amundiが、Spiko Amundi Overnight Swap Fund(SAFO)をEthereumとStellarで立ち上げました。コミットメントは1億ドル、受託機関はCACEIS、NAVの配信はChainlinkが担います(The Block)。2026年10月のプレス見出しはSAFOを世界最大のトークン化ファンドと呼びましたが、これは発行体側の主張で、当サイトでは独自に検証していません。
Ondo Financeは2025年9月17日、米国債に連動する利回り付きトークンUSDYをStellarに投入しました。発表では、USDYは米国内および米国人には提供・販売されないと明記されています(SDFのプレスリリース)。RedStoneがオラクルのフィードを提供しており、USDYはレンディングの担保としても使えます。
WisdomTreeは2024年5月、アプリ「WisdomTree Prime」を通じて13本のデジタルファンドと金トークンをStellar上で発行しました。当時Primeは米国41州で利用可能でした(SDFの声明)。2025年9月にはEthereumとStellarでプライベート・クレジット・ファンドも追加しています。規模は小さいものの注目すべき動きとして、Centrifugeが2,000万ドルでdeRWAトークンをローンチ、Figureが2026年5月にSEC登録の利回り付き商品YLDSを発行、Archaxが2026年10月末にユーロ建て政府短期証券のトークン化商品を発表しています。
| 発行体 | Stellarでトークン化している資産 | Stellar上の残高(rwa.xyz) |
|---|---|---|
| Spiko | MMF(短期国債) | 約20億ドル |
| Franklin Templeton | BENJIのMMF | 約6億8,100万ドル |
| Ondo | 米国債裏付けノートUSDY | 約5億3,900万ドル |
| WisdomTree | ファンドと金トークン | 約3,950万ドル |
| Centrifuge | deRWAファンドトークン | 約3,000万ドル |
| Figure | 利回り付きドルYLDS | 約2,520万ドル |
数値は当サイトの直近の確認時点におけるrwa.xyzのもので、日々変動します。rwa.xyzにはRealizとGalaxy Digitalによる大口ポジションも2件載っていますが、公開情報から裏付けとなる商品を特定できなかったため、この表からは除外しています。
数字で見るStellarのRWA
3つの異なる指標が、同じストーリーを別の角度から示しています。SDFによる2025年の振り返りでは、Stellar上のRWAは前年比172%増でした(SDF 2025年レビュー)。Token Terminalは2026年9月ごろのStellar上のトークン化RWAを約33億ドルとし、この指標でStellarをブロックチェーン3位に位置づけました(CryptoSlate)。そしてrwa.xyzは直近の確認時点で約39.2億ドル、30日で約13%増、保有者数24,791、直近30日間のRWA送金額は約5億3,100万ドルを示していました。
冷静さを保つうえで大事なのは保有者数です。約2万5,000のアドレスが40億ドル近くを保有しているということは、1アドレスあたりの平均額は一般的な個人口座をはるかに上回ります。ここはまだ機関投資家と富裕層の市場なのです。残高も少数の発行体に集中しており、Spiko、Franklin、Ondoの3社で大半を占めます。
アジア太平洋のRWA事情:先頭を走るのはシンガポール
アジアの読者にとってもっとも関係が深いのは、シンガポールの動きです。2025年5月、Franklin Templetonはシンガポール金融管理局(MAS)からFranklin OnChain U.S. Dollar Short-Term Money Market Fundの認可を取得しました。シンガポールで個人投資家が購入できる初のトークン化ファンドとされ、最低投資額は20米ドルです(Fintech News Singapore)。この個人向けファンドがStellar上で運用されていることは、Franklin自身の5周年リリースでも確認できます。トークン「sgBENJI」はADDX、DBS、InvestaX、CapBridgeなどのプラットフォームを通じて販売され、購入条件はチャネルごとに異なります。
もうひとつのピースはインフラです。2026年10月29日、SDFはEuroclear、HSBC、SGX Group、Temasekが出資するシンガポールのデジタル市場インフラ事業者Marketnodeへの戦略的出資(金額非公表)を発表しました(SDFのプレスリリース)。MarketnodeはすでにCGS International、Franklin Templeton、Maybank Asset Management、WisdomTreeのトークン化商品をStellar上で取り扱っており、一部のBNY Investmentsファンドへのオンチェーンアクセスも発表しています。対象は域内の運用会社、販売会社、適格投資家で、個人投資家ではありません。
それ以外の地域では、まだ動きは限られています。インドネシア、ベトナム、韓国、日本で、Stellarベースのトークン化ファンドを現地の認可チャネルで販売している例は見つからず、地域全体を対象にしたMarketnodeの案件以外に、これらの市場でのSDFの提携も確認できませんでした。各国のルールはアジアハブで国ごとにまとめています。
トークン化ファンドを買えるのは誰か
いわゆる「RWAブーム」の記事が素通りしがちなのがここです。トークン化されたからといって、誰でも買えるわけではありません。ファンドトークンはファンド本来の法的な制約をそのまま引き継ぎ、発行体は前述の承認フラグでそれを強制します。承認が必須の資産であれば、アカウントが承認されるまでトークンはウォレットに届きません。
実際の購入可否は、大きく3つに分かれます。FOBXXのような米国登録商品は、発行体が米国ルールのもとで受け入れられる投資家向けです。USDYのような商品は米国外の投資家だけに提供され、その場合でも居住国の証券法で制限される可能性があります。そしてMarketnodeやInvestaXのように、機関投資家・適格投資家・プロ投資家向けのプラットフォームがあります。シンガポールのプロ投資家なら複数の商品の対象になるかもしれませんが、ジャカルタ、ハノイ、ソウル、大阪の個人投資家の多くは、国内で案内される商品が1つもないことに気づくはずです。
後者に当てはまる場合、このトレンドに乗る現実的な方法は間接的なものになります。ネットワークのネイティブ資産であるXLMを持つか、規制に沿ったステーブルコインを使うかです。どちらも米国債の利回りをもたらすものではなく、XLMの価格は大きく動くことがあります。何かを買う前に、規制と安全性のまとめを読んでおきましょう。
RWAトークンのリスクと「偽トークン」問題
トークン化ファンドには、金利変動、組入資産の信用力、そしてMMFでもまれに起こりうる元本割れといった通常のファンドのリスクがあります。オンチェーン化はさらに独自のリスクを加えます。スマートコントラクトとの連携は失敗しうるし、オラクルは操作されうる(StellarのDeFi分野は2026年2月にこれを経験しました。詳しくはDeFiのページへ)。そして発行体の凍結・回収権限は諸刃の剣です。コンプライアンスを守る一方で、完全な無記名型の資産を保有することは決してない、ということでもあります。
一般ユーザーにとってもっとも現実的なリスクは偽物です。Stellarでは誰でも任意のコードでトークンを発行できます。直近の確認時点でも、エクスプローラーではBENJI、USDY、YLDS、EURCV、AUDD、GYENといったコードを無関係の発行者が使っていました。トークンが本物と言えるのは、その発行アカウントが実在する企業のものである場合だけです。StellarにおけるFranklinのBENJIの場合、公式資産のホームドメインはfranklintempleton.comです。必ずエクスプローラーでコードと発行者、またはホームドメインをセットで確認しましょう。ティッカーだけでは何の証明にもなりません。
それでも全体像は明るいものです。大手運用会社が5年にわたってStellar上で実際の資金を動かし、シンガポールは規制当局が個人向けトークン化ファンドを認可できることを示し、Marketnodeは域内に機関投資家向けの入り口をもたらしました。ネットワーク上で誰が何を作っているのか、より広い視点で知りたい方はStellarの提携と普及状況のガイドをどうぞ。
よくある質問
Stellarにおけるトークン化とは何ですか?
規制下の発行体が、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の受益権や米国債を裏付けとするノートといった実物資産の所有権を、Stellarの台帳上のトークンとして記録することを指します。資産に対する法的責任は引き続き発行体が負い、ブロックチェーンは「誰が保有し、どう移転したか」の記録になります。発行体は保有前の承認を必須にしたり、法律上必要な場合に凍結や回収(クローバック)を行ったりできます。
Franklin TempletonのBENJIファンドはStellar上にありますか?
はい。Franklin OnChain U.S. Government Money Fund(FOBXX)は2021年にStellarでローンチし、BENJIトークン1枚がファンドの1口に相当します。その後Franklin Templetonは他のチェーンにも展開しましたが、最初のネットワークはStellarでした。当サイトの直近の確認時点で、rwa.xyzはStellar上のFranklin商品を約6億8,100万ドルと評価しています。
Stellar上でトークン化されている実物資産はどのくらいありますか?
直近の確認時点で、rwa.xyzはStellar上の84商品・約39.2億ドル分の実物資産(distributed RWA)をカウントしており、最大の発行体はSpiko、Franklin Templeton、Ondoです。Token Terminalは2026年9月時点で約33億ドルとしています。集計方法が異なるため幅をもって見るのが無難です。ドル建てトークンは別枠で数えられるので、ステーブルコインのページもあわせてご覧ください。
アジアの個人投資家はStellar上のトークン化ファンドを買えますか?
多くの場合、直接は買えません。明確な例外はシンガポールで、Franklin TempletonのMAS認可トークン化MMFが2025年に認可プラットフォーム経由で個人投資家に開放されました。OndoのUSDYは米国人を対象外とし、多くの商品はプロ投資家や適格投資家向けです。インドネシア、ベトナム、韓国、日本では、これらのStellar上のファンドを現地の認可チャネルで個人向けに販売している例は見つかりませんでした。
Stellar上のトークン化ファンドが本物かどうか、どう見分ければいいですか?
ティッカーだけでなく、発行アカウントとそのホームドメインを確認してください。Stellarでは誰でもBENJIやUSDYという名前のトークンを作れるため、偽物も存在します。エクスプローラーで資産を検索し、ホームドメインが本物の発行体のもの(BENJIならfranklintempleton.com)かどうかを確かめましょう。



